たまに不安になることだってある。
四六時中ずっと一緒というわけにはいかないことだし、不安になる要素はたくさん。
それでも、耳元で愛の台詞なんかをささやかれると信じてしまう。
嗚呼、なんて単純なんだと自分で自分を自問自答したいくらいだ。

「ねぇ、いい加減機嫌直したら?」

ニコニコ、と自分の顔を覗き込むその姿はもうあまりにも見慣れたもので。
普段は優しいふりをしている彼が、二人きりとなれば意地悪な小悪魔となる。

「誰のせいだと思ってるのよ」
「まぁ、その態度から言って僕のせいなんだろうね」
「そうよ。どう責任とってくれる?」
「さぁ、どうしようか」

クリフは軽く笑って、上手くかわそうとしている。
毎度毎度この手に引っかかると思ってるのだろうか、この男。
と言っても、いつも引っかかってしまうのは当の私なのだから救いようが無い。
はぁ、と深いため息をひとつ。

「もういい。ほっといて」

しっし、とあっちいけポーズをしてやった。
そんなことをしたって、クリフが素直に聞いてくれるとはもちろん思っていない。
それでも、自分がいつまでも振り回されるなんて気に食わない。
だからこそこうしていつも対抗してみせるのだが、結局は私が負けてしまうのがオチなのだ。

「お嬢さん、コレあげるから機嫌直してくれないかな?」

そういって差し出された、青い羽。
青くキラキラと光を反射して、まるで透き通っているかのように輝くソレ。
このへんではプロポーズに使われるんだ、とエレンが言っていたのを思い出した。
相変わらず表情を変えず、ニコニコとしたままのクリフを目の前に。
この小さな羽根がどういうことを意味しているのかを頭の中で整理する。

「これ…意味分かってる?」
「もちろん。で、いらない?」

余裕、ということはないのだろうけれど。
それでもどこか余裕そうなポロポーズに、思わず皺を寄せた。
結局、また自分が敗北してしまったと少し笑いを含んで。

「いる」

返事を返して、クリフの笑顔が本当に嬉しそうな笑顔に変わった。
少し頬が赤く染まっているのは、きっと気のせいではないだろう。
普段見ることのできないクリフの表情。
そして、あっさりとしていたけれど彼らしいプロポーズに。
クレアは笑顔を見せた。 ふと、見上げた雲の上。
広々とその雄大さを見せつけるかのように、空の青が広がっていた。




2006. 青い空と青い羽
某サイトさまの影響で黒クリフにはまってしまってる影響。愛ゆえです。